南の空に、柄杓を伏せたように見えます

蠍座の南方にある南斗六星だけでも探してみてください

　ケイロンは、大神ゼウスの父クロノスと水の精ピリュラの間に生まれた子で、

ゼウスとは兄弟になります

ケンタウルスという半獣神たちは、

弓矢を持って野山を駆けめぐる野蛮で荒々しい種族でしたが、

ケイロンだけは違っていました

　彼は不死身の身体を持ち、

音楽・医術・予言術・狩猟

の奥義を究めた大学者で、

気高く優しく、そして実に聡明でした

　ケイロンはペリオン山の洞窟に住み、

そこで多くの若者たちを熱心に教育しました

彼の教え子には英雄ヘラクレス、

神医アスクレピオス、

トロイ戦争の勇士アキレウスなど

そうそうたる顔ぶれが揃っています

　このケイロン自身が主人公になった神話は殆どないのですが、

これらの英雄たちの物語には必ずその師として

ケイロンが登場しています

もしケイロンがいなかったら、

これらの英雄も存在しなかったと考えると、

その存在の偉大さが分かりますね

　これほど偉大なケイロンでしたが、その死はとても悲劇的でした

　それはヘラクレスが十二の難行の４番目

エリュマントスの大イノシシを生け捕りに出かけたときのことです

途中出会ったフォーローというケンタウルスと親しくなったヘラクレスは、

その義理の兄の酒神バッカスが送った酒を二人で酌み交わしていました

ところがその酒の匂いがあまりにいい匂いだったので、

それにつられた他のケンタウルス族が突然２人に襲いかかってきたのです

　怒ったヘラクレスは猛然と反撃し、

怪力ヘラクレス相手ではかなわないとみたケンタウルス族は、

散り散りになって逃げ出しました

そのうちの数人を追いかけたヘラクレスは、

ついに洞窟まで逃げ込んだのを追いつめて、

その中に向かって弓を引きました

　ヘラクレスは怒りのあまり気が付いていなかったのですが、

そこはかつての彼の師、

ケイロンの住む洞穴だったのです

　ヘラクレスが放った矢は、

洞窟の中にいたケイロンの膝を射抜きました

しかもこの矢には、

死ぬ まで猛烈な苦しみに襲われるというヒドラの猛毒が塗られていたのです

　ケイロンはなまじ不死身であったために死ぬことができず

猛烈な苦しみにのたうち回りました

ついに耐えきれなくなったケイロンは、

巨神族の英雄プロメテウスにその不死の身体を譲り、

ようやく永遠の眠りについたのです

　大神ゼウスは賢者ケイロンの死を悼み、

その姿を天に上げて星座にしました

それが射手座の始まりだといわれています

　狩猟の名人でもあったケイロンは、

今も夜空で西の空に向かって弓を構えています

これはゼウスの命令で、隣にいる蠍座が、

暴れ出さないように見張っているためだという話も残っています